「さて、我々は聞いている。古のデネ王家の栄光を、荒々しい勇士らの手柄を」。

英雄『ベオウルフ』の物語はこうして始まる。だが、一つの物語どころか、この言葉は、新しい文学時代を切り開く勇ましい喊声としても解釈することが出来よう。

とりあえず、物語のあらすじを見てみよう。

太古の昔、デネ王フロースガールは、新しい城を建設した後に、祝いの宴を催す。しかし、近くの洞窟に住む怪物、「呪われしグレンデル」は、楽しそうな祝宴の歓声と王の栄光に嫉妬して、連夜城の哨兵を襲うようになる。王に仕える剣士は何度もグレンデルに立ち向かうが、グレンデルは魔法で守られているため、勇士らはことごとく殺され、グレンデルに食べられてしまう。

12年間も続く夜ごとの虐殺の噂を聞き、海の向こうからやって来たのは、英雄ベオウルフだ。神に恵まれたベオウルフは、奇跡的な腕力でグレンデルに立ち向かい、怪物の腕をもぎ取り、討伐に成功する。フロースガール王と国の人々はベオウルフを祝福するために、感謝の宴会を開く。

だが、次の夜、グレンデルの母親である恐ろしい海の怪物が現れ、息子の復讐に挑んでくる。そのため、王の家来がまたまた虐殺されるが、ベオウルフはグレンデルの母親がひそむ海底までもぐり、彼女をも退治する。

自国へ帰り、国王となるベオウルフは50年間も政治を司り平和を保つが、その末には炎を吐くドラゴンが出現し、国を荒らしてしまう。年老いたベオウルフは死ぬ覚悟で、極悪な怪物ともう一度戦わなければならない。

最後のこの決戦の時、ベオウルフはドラゴン退治に成功するが、自分も致命傷を受けてしまったがために、国民のために命を捧げる結果となる。『ベオウルフ』物語は英雄の葬式の場面で閉幕となる。