『産業革命はイギリスで起きてしまいました。アフリカ、中南米、中近東はもちろん、日本や中国でさえまったく起こりそうな気配がなかった。と言うと、いかにも欧米の白人が優秀で、ほかの民族が劣等であるかに思えてきます。しかし、事実はそうではありません。例えば、五世紀から一五世紀までの中世を見てみましょう。アメリカは歴史の舞台に存在しないに等しい。ヨーロッパも小さな土地を巡って王侯間の抗争が続いており、無知と貧困と戦いに彩られていました。「蛮族」の集まりであったわけです。』 「国家の品格」第一章より。
欧米独特の論理への執着によって、世の中はやられてしまっている。この「論理馬鹿仮説」が、藤原氏の大きな主張であり、前章ではそれを見てきた。だが、そういう流れから考えたとしても、藤原氏がなぜ中世ヨーロッパをこうも批判しているのかが、正直に言うと、私にはよくわからない。なぜなら、論理への執着などがあったとしても、それはルネサンス期以降の話であって、中世がどうのこうのというのはあまり関係ない気がする。